3つのゲーム

 GMとして、プレイヤー側のセッションへの取り組みを3つのモデルに切り分けて考えてみます。もちろん、これ以外のモデルも存在していることでしょう。

3つのゲームの提示

状況解決のゲーム

プレイヤーは、提示された状況を解決する。

演出のゲーム

プレイヤーは、提示された状況の解決方法を演出する。

状況提示のゲーム

プレイヤーは、キャラクターの遭遇する状況を新たに提示する。

 ここで用いた「ゲーム」という言葉はそれ自体含意的であることに注意してください。それは一種閉じられた遊戯であり、それと理解していない人には、耐え難いものです。

 ほとんどのセッションでは、プレイヤーのGMに対するセッションの取り組み行為は、これらの複合よりなっていると考えることができるでしょう。
 それぞれのゲームについて、もう少し深く踏み込んで考察してみます。

状況解決のゲーム

 プレイヤーは"何者か"に提示された状況を解決します。状況はキャラクターの外側にあることも(外部問題)、内側にあることも(内部問題)あります。また、状況はGMによって提示される場合、自らによって提示される場合、他プレイヤーによって提示される場合があります。
 プレイヤーは、キャラクターが取り得る可能性のある行動を選択し、これを解決しようと試みます。その思考の過程、取る手段の選択こそが面白さにつながります。
 一つ注意しなければならないのは、この状況は他のプレイヤーに提示されなければ、他のプレイヤーは介入することも、何らかの形で関わることもできないということです。関わることのできない状況とその解決は、他の関わることのできる状況解決、演出、状況提示と何らかの深い関連性をもってはじめて意味を持ちえます。

例示1 状況解決のゲーム 外部問題

 「キャラクターはインディアンの部族に伝わる伝説の秘宝を捜し求めている。これを見つけ出し、立ちふさがる様々な状況を解決するための手法を考え出さねばならない。」
 これはキャラクターの外部にある問題です。キャラクター同士がこの秘宝を求めるために、協力して冒険に当たるのは典型的な探索行の物語になります。対して、この秘宝を巡って利害が対立したり、あるいは婉曲にこの秘宝にまつわる物語を進行させるのも容易です。外部問題は基本的には他のプレイヤーやGMにとって介入しやすい問題です。
 この問題の解決には、「基本的な常識」と「問題解決に特化したゲーム知識」、「ルールに関する知識」が必要になります。

例示2 状況解決のゲーム 内部問題

 「キャラクターは、自分の親友を見殺しにしてしまい、罪悪感から来る悪夢に未だ悩まされ続けている。」
 これはキャラクターの内部にある問題です。キャラクターの内部に封印された状況であるため、キャラクターがそれを表面化させないとを決定すれば(「演出」の項目を参照して下さい)、いつまでも状況は解決しません。従って、状況を抱えるキャラクターの主体的な解決への努力が必須になります(勿論、これはどの条件では同じですが、キーパーソンが一人に絞られるのです)。
 キャラクターは果たして本当に問題を抱えているのか? 実際には、本当に問題を抱えているのかどうかは演出によってしか示されないのです。GMや周りのプレイヤーが「君は問題を抱えている」と決めたところで、本人が演出しないなら、周囲の人にとって、そのキャラクターが問題を抱えていることにはなりません。
 この問題の解決には、「基本的な常識」のみが必要になります。それ故にどのようなゲームにおいても取り組むことが出来ます。ただし、このような内部問題に取り組むことをルール的に補佐するシステムでは、ルールに対する知識が必要不可欠になります。

演出のゲーム

 プレイヤーは状況の解決を演出します。演出に力点を入れる場合、多くの場合、状況の解決方法は既に提示されており、ストーリーは確定されています。よって、ストーリーがずれて話がしっちゃかめっちゃかになる心配をしなくていい「安全な方法」です。この論法は「プレイヤーは状況の解決をしたいのではなく、状況の解決をするフリをしたいのだ」と考える方法であるため、一部反発を招くことがあるようです。しかしある意味真実であることは否定できません。
 演出のゲームにおいて、プレイヤーは既に確定された状況の解決への演出をいかに美しく行うかが問われます。そのため、この手法では「演出の知識」を問われます。
 演出を行う場合、演出が周囲の人物に理解される必要があります。そのため、演出だけで美しいと思えるような、場に合致した、洗練された演出表現を考える(あるいは借用する)か、あるいは「場」そのものに連結したお約束的な演出を行う、というのが効果的な方法です。
 お約束的な演出を行う場合は、演出を受ける相手側にも相応の知識が必要になります。その演出に違和感を覚えてはならない、という前提条件がつくためです。そのため、ある特定の演出をスムーズに行うために、あらかじめ趣味を共通させておく(参考作品などを提示しておく)という方法が見られます。

状況提示のゲーム

 多くのゲームは上記二つの路線に沿って行われますが、プレイヤーは状況提示のゲームを常に平行で行っていくことができます。つまり、GMによって、あるいはプレイヤー同士の共通認識によって、規定されている現在の状況より更に面白い状況を提示するという手法です。
 演出表現の手法が過剰化すると状況提示のゲームになります。総ゲームマスター状態と呼ばれる状態がこれで、より面白い状況を提示し、その解決方法が提示され、演出され、その演出に着想を得て更にブレイクスルーをもたらす状況が提示され…とストーリーの(少なくともその場での)体感的な面白さが飛躍的に高まっていく手法です。
 ですが、このゲームに失敗すると、ストーリーラインのないめちゃくちゃなセッションが出来上がります。そのため、推奨できる方法ではないと言えましょう。
 GMの規定する状況にランダムで大きな変更を付与するタイプのシステムを持つRPGはこの操作を意図しているのではないかと思われます(例えばシーン・カード制)。


 このような切り口でゲームを切り分けることにより、どのようなゲームを目指してどのように運営していけばいいのか、考えることが可能になります。